先日、終活をテーマとした講演会に参加しました。
今回の講演では、ご自身も「おひとり様」としてこれからの暮らしや終活について考え、実際に準備を進めている講師から、さまざまな経験をもとにしたお話を伺いました。
終活というと、葬儀やお墓、相続など「亡くなった後の準備」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
終活では、自分がこれからどう暮らしていきたいのかを考えたり、必要な情報や思いを整理しておいたりすることも大切です。
今回の講演で興味深かったのは、そうした準備を実際に進める中で、講師自身がどのようなことに悩み、どのような工夫をしてきたのかという、実体験に基づくお話でした。
必要性を感じたのは40代
講師がエンディングノートの必要性を感じたきっかけは、40代で経験した病気と入院だったそうです。
ただ、そのときにすぐ書けたわけではありません。
実際に病気や入院に直面しているときには、これからのことを落ち着いて考えたり、自分の情報を整理したりする余裕を持つことが難しかったそうです。
その後、50代になってから本格的にエンディングノートを書き始めたとのことでした。
エンディングノートというと、「高齢になってから準備するもの」という印象があるかもしれません。
しかし、自分のこれからや、もしものときについて考えるきっかけは、必ずしも年齢によって訪れるものではありません。
そして、実際に何かが起きたときには、準備する余裕がないこともあります。
だからこそ、年齢だけで「まだ早い」と考えるのではなく、元気なときに少しずつ考えておく。
エンディングノートは、年齢を重ねてから考えるものとは限らない。
講師の経験から、そのことを改めて考えさせられました。
まずは、書けるところから
講師自身、最初に手に取った分厚いエンディングノートには、少し抵抗を感じたそうです。
たくさんの項目を目の前にすると、「これを全部書かなければ」と思ってしまうかもしれません。
そこで講演では、最初からすべての項目を埋めようとせず、自分が気になるところから書いていけばよいというお話がありました。
銀行口座や保険のこと。
大切な書類のこと。
家族へ伝えておきたいこと。
今の自分にとって必要だと思うところから始めて、空欄があっても構わない。
そして、あとから書き足したり、考えが変われば書き直したりする。
エンディングノートを前にして構えてしまう方にとって、「全部書かなくてもいい」という考え方は、最初の一歩を少し踏み出しやすくしてくれるのではないでしょうか。
書いていくうちに、残したいことも変わる
講師がエンディングノートを書き始めた頃、特に気になっていたのは、銀行口座や保険など、自分に何かあったときに必要となる情報だったそうです。
その一方で、家族への言葉や家族についてのことは、必ずしも書かなくてもよいと考えていました。
その考えが変わったきっかけの一つが、ご家族の介護でした。
介護は一人で担ったのではなく、兄弟やその家族と協力して行い、そのおかげで自分自身も仕事を続けることができた。
そう振り返ったとき、自分が残すものは、自分一人の力だけで築いたものではないという思いを持つようになったそうです。
そこで、家族への感謝の言葉や、自分が誰の子で、誰の孫なのかといった家族についてのことも、ノートに書き加えるようになりました。
最初に書いたときには必要だと思わなかったことでも、その後の経験によって「残しておきたい」と思うことが出てくる。
エンディングノートは、一度書いたら終わりではなく、その時々の自分に合わせて見直していくものでもあるのだと感じました。
「見つけてほしい。でも、見つかっては困る」
今回のお話の中で、とても現実的だと感じたのが「保管場所」の問題です。
エンディングノートには、銀行口座や保険をはじめ、大切な個人情報や資産に関する情報を書くことがあります。
必要なときに見つけてもらうためには、分かる場所に置いておきたい。
しかし、第三者にも簡単に見つけられる場所では、防犯上の心配があります。
講師自身も、この問題にはかなり悩んだそうです。
その後、身近な方が亡くなった際のさまざまな手続きの大変さを知ったことをきっかけに、「情報を書いておくこと」だけではなく、残された人が必要な情報にたどり着けることまで考えるようになったとのことでした。
そこで講師は、もしものときに確認してもらいたい親族へ、エンディングノートの存在や、大切な書類などの保管場所を実際に伝えたそうです。
大切な情報だから、誰にでも見つかるようにする必要はありません。
一方で、自分しか知らない状態のままでは、必要になったときに活用されない可能性があります。
「情報を守ること」と「必要な人には分かるようにしておくこと」。
エンディングノートを作成するときには、書く内容だけでなく、その先まで考えておく必要があることを学びました。
今回の講演では、エンディングノートを実際に作成し、見直してきたからこそ分かる悩みや工夫を知ることができました。
まずは書けるところから始め、生活や考え方が変われば見直していく。
そして、必要なときに、その情報が必要な人へ伝わるようにしておく。
エンディングノートを「書くこと」だけでなく、書いたその先まで考える機会となりました。

